昭和2年に建てられた、京都の駒井家住宅をイメージした家
テーマカラーは漆喰の白・木の茶色・そして屋根瓦のグリーン 神奈川県S様邸
今回お話を伺ったのは、リタイア後を楽しむために、新築の家を建てられたS様ご夫妻です。
小田原の小高い土地に建てられた、白っぽい外壁に緑の瓦屋根。大きめの軒がせり出した、シンプルだけどちょっと懐かしいような素敵なお家です。キッチンだけでなく、窓枠や階段、ドアなどの仕様も納得がいくまで研究された、こだわりについてもお話いただきました。
欲しかったのは、幼い頃慣れ親しんだ“昭和レトロな家”
――今回家を新築するにあたり、京都にある昭和2年にアメリカ人設計士のヴォーリス氏によって建造された駒井家住宅のイメージを参考にされたそうですね?
(奥様)夫や私の祖父母が暮らしていたような、昭和初期の洋風建築の家が希望でした。
言葉で説明するのが難しく、イメージに合う家を探してさまざまな建物を見て回りましたが、なかなかピッタリのものが見つかりませんでした。
(旦那様)戦前〜戦後の中流家庭によく見られた、洋室もあるけれど、普段暮らす畳の和室もあるといった、いわゆる「和洋折衷」の家が私たちが希望しているものでした。
いろいろと調べる中で、京都にある駒井家住宅の写真を見つけ、実際に設計事務所の人と一緒に見に行ったんですよ。
この家が一番私たちの思う家に近いと思ったのです。
■カスタマイズで自分のイメージ通りの造りに!
家のイメージに合うだけでなく、部屋のサイズや生活スタイルに合ったパーツや資材をカスタマイズ
――駒井家住宅の要素が上手に取り入れられていますね。
(旦那様)駒井家住宅というイメージに合う家が見つかったことで、一気に話が具体化しました。だれが見ても、こういう家、と意思統一がしやすくなったと思います。ところが実際に建てるとなると、日本の規格の建具やパーツだと、モダンに走り過ぎていると感じたり、サイズなどが合わなかったりと、思い通りに変えられる要素がとても少なかったのです。
日本のメーカーの既製品はイメージと違う。昔のように建具を作る職人さんはなかなかいないですし、とても高価なものになってしまいます。その点、輸入品は昔と同じ普遍的なデザインを相変わらず提供し続けていて、手頃なコストで入手できます。ただし、瓦屋根の在来工法の家に合わせるにはカスタマイズしてもらわなければなりません。そこでこちらにご相談したところ、アメリカの建材やパーツの取扱種類も豊富でしたし、ご担当の方もよく私たちの意図を汲んでくださいました。施工のこともしっかりとわかっていらしたので、安心してお願いできます。それは大きな決め手となりましたね。
落ち着いた若草色が新鮮なキッチンスペース
■イメージに合うように研究し尽くしたキッチン
――キッチンをDeWilsにした決め手は何だったのでしょう?
(奥様)カタログを取り寄せたり、ネットで調べたりするうちに、少しずつ「こういうのがいいな」というものが私の中で決まっていきました。それが比較的シンプルなSHAKER(シェーカー)というデザインでした。実際に施工することも考えて夫が調べて、名前があがったのがDeWilsのキッチンだったんです。
――他とも比較したりして?
(旦那様)はい、いくつかのメーカーを検討し、研究して決めました。カタログを取り寄せて、これはいいかもと思ったので、直接、DeWilsのショールームへ行ったのです。いきなり伺ったので、最初はデザイナーの方もいらっしゃいませんでしたし、私たちが希望するSHAKER(シェーカー)のキッチンの展示もありませんでした。木目調やデコレイティブなものが多かったですね。
――では、ショールームに行ったのは期待はずれだったのですか?
いいえ、そんな事はありません。商品自体はカタログで研究していたのですが、実際にものを見て、質感などが自分たちのイメージと合うものかどうかを確認することができました。
打ち合わせで2回3回とショールームに通っていると、具体的にいろいろなデザインや設計のご提案を迅速にしていただき、こちらなら大丈夫と。
キッチンはSHAKER(シェーカー)のペイントというつもりでいましたので、素材はメイプルでと打ち合わせをして決めていきました。
■歳を重ねても、動きやすくて使いやすいように計算されたキッチン
――キッチンは奥様のご希望がメインになったとのことですが、まず最初に考えられたのは?
(奥様)一番に考えたのは使いやすさです。冷蔵庫やシンク、コンロの配置を含め、実際に料理をする時の動線を考え、たくさんのアドバイスをいただきました。
――奥様のご希望、旦那様のこだわり、そこにデザイナーの目線から見た、ちょっとした工夫が加わり、ご希望通りの使いやすいキッチンとなったのですね。
(奥様)はい、私では図面を見ても、具体的にイメージするのは難しい部分がありますから。親身にご相談に乗っていただけて、実際イメージしたキッチンの形になり、満足しています。
■この家のテーマカラーのグリーンをキッチンにも取り入れて
――キッチンの色はとても変わっていますが、落ち着いた雰囲気ですね。
(奥様)たまたまTVドラマで見たキッチンの印象をデザイナーさんにお話したのです。そして、この家のイメージカラーのグリーンに合うのではないかとご提案いただいたのが、このキッチンに取り入れた、白いクオーツストーンの天板と Provence Pear(プロバンスペアー)という色です。
実際にこの色にしてみて、大正解でした! なかなか選ぶには勇気のいる色かもしれませんが、若草色と言っても落ち着いた色ですし、白い天板はキッチン全体が明るくなるとのアドバイスをいただいて決めました。後日、実物のカラーサンプルをすぐに送ってくださり、これは家を作る際の他の打ち合わせでも「この色だから」と示すことができるので、とても助かりました。
■求めたのは、シンプルなキッチン
――つまみもとってもスッキリしたデザインですね。
(奥様)つまみなどの金具はとてもたくさんの種類があるので本当に悩みました。
(旦那様)妻は陶器製の白いつまみが希望だったようです。私はデザインが良くても陶器と金具の組み合わせなので、強度的には弱いだろうと考えました。
(奥様)私も女性っぽいイメージが強くなることは望んでいません。夫の意見も尊重してシンプルなものにしたのです。
(旦那様)キッチンというものは家の中心になる場所だと考えています。
だからこそ、デコレイティブではなく、飽きのこない普通でスタンダードなものがいいというのが私の思いです。
コンロの上の換気扇フードやコンロは、デザインがどうこうというよりは機能性と、見た目のシンプルさを追求しました。
■昭和レトロなチェックガラスの戸棚は使い勝手にも工夫を
――この戸棚のガラスも素敵ですね..。奥様がお選びになったのですか?
(奥様)はい、ガラスの専門店やショールームも見に行って、チェックガラスが良いと思いました。昔からあるスタンダードなものとして選びました。
■3.11大震災を教訓に、耐震にも配慮した戸棚
3.11大震災を機に災害があっても生きていける家、ということを考えられたとか。輸入の戸棚や資材は、日本のメーカーに比べると耐震という面ではどうしても弱くなります。S様のご希望にデザイナーが機転を利かせて、国内メーカーの耐震ラッチを設置。
(旦那様)この棚には耐震ラッチが付いています。これは日本のメーカーのものなのですが、3.11大震災があってから、このようなものも必要かなと思ったのです。デザイナーの方にご相談したら、こちらを探して、つけてくださいました。
■日本のライフスタイルに合わせて、高さを考えた棚割りにカスタマイズ
出し入れをしやすいように、日本のオーブンレンジのサイズに合わせて、棚割りをカスタマイズ。
そして炊飯器を置く予定の下側は引き出せるようにスライド式に。
――左側にはオーブンなどを置く予定なのですね。
(奥様)そうです。こちらもデザイナーさんが工夫をしてくださったんです。
置く予定にしているオーブンレンジの大きさと背丈に合わせて少し高いところに棚割りをしています。オーブンレンジから物を出し入れするのが楽なように考えて作ってくださいました。
――なるほど。下の棚は引き出せるようになっているのですか?
(奥様)こちらには炊飯器を置く予定にしています。炊いていると湯気が出たりして湿気で棚が痛んだりすることもあるので、引き出せるように設置してくださいました。
このような細かいところの使い勝手も良いように、痒い所に手が届くような心遣いがありがたいですね。
(旦那様)もともとアメリカのものですから、最初の仕様が日本人には合わないところがあるんですね。そういう部分を私たちの暮らしに合うようにカスタマイズして棚割りを変えていただきました。
デザイナーからワンポイント
実際の動きを考え、しゃがんでも邪魔にならないゆとりあるスペース
こちらの棚は、しゃがんで下の引き出しから物を取り出したりするときも、アイランドに体が当たらないように、スペースの幅を計算して広めにとってあります。長くお暮らしになることを想定して、今はそれほど気にならなくても、歳を重ねていかれても使いやすいキッチンであるように心がけました。
■シンクの前の大きな窓。これはどうしても欲しかった!
――そして、このキッチンダイニングで目に飛び込んでくるのはシンクの前にある大きな窓です。夜なのでわかりにくいのですが、他の壁の幅木と同様、厚めの額縁が印象的で壁の真ん中で外の風景が切り取られた絵のようです。
(奥様)これは私の希望です。窓の外にはアメリカハナミズキを植えてもらいました。花が咲いたり紅葉したりして、キッチンにいても季節を感じることができます。
■アイランドにも収納スペースや電源コンセントが
――アイランドキッチンは、主婦の方は憧れとおっしゃる方が多いですよね。
(奥様)実はこれは夫の希望によるものなんです。私は別になくてもいいかなとは思ったのですが・・・(笑)。
(旦那様)私が考えるスタンダードなレイアウトは、ちょうど、このようなタイプだったんです。
――どこか、ここをもう少し変えればよかったと思うところはありますか?
(奥様)まだ、実際に住んで暮らしていないので、これから先「もっとこうすれば良かった」という点は出てくるかもしれません。でもそれも含めて家を作っていくことを楽しみたいと思っています。今の時点ではとても満足です。
下駄箱・洗面所もDeWils製で統一感を
(写真1)玄関に置かれている下駄箱もDeWils製です。
玄関は洋館のような作りで、段差がないため、幅木の高さに合わせて、下駄箱の棚の下に足をカスタマイズで足しています。
(写真2)2Fにある洗面所のバニティー。
こちらも 1F の下駄箱も同じデザイン。
色は壁の漆喰と同じようなトーンの温かみのある白です。
■漆喰の壁に合った微妙なホワイトが狭いスペースに広がりを
――下駄箱と洗面所は、カラーは壁と同じような白、デザインはキッチンと同じものを選んでいますね。
(旦那様)DeWilsのカラーでも白は3色くらいあるんです。その中で壁の漆喰の色とマッチする色が、この色、Not Quite Whiteです。
――白と言ってもいろいろありますから、バリエーションがあるのはいいですね。
あまり色数を多くしたくない、個性的にしたくない、という思いが私にはありました。玄関や下駄箱はスペースも限られています。キッチンと同じデザインで統一し、壁に溶け込むようなこの色で仕上げてスッキリとさせました。
このSHAKER(シェーカー)というスタイルは、あまり主張し過ぎない、オーソドックスなところが気に入っています。
■つまみの色は室内の木の色に合ったもので統一感を
――まみは黒っぽい、部屋の木の色と同じような色ですね。
(旦那様)これもキッチンと同じく、なるべく飾りなどの付いていない、金物としての定番色の中から、オイルラベッドブロンズ(ORB)を選びました。
室内のドアノブにも木の色と合うように、ほとんどこのカラーのものを使っています。
■ミラーはシンプルな三面鏡を採用
――鏡はアンティークのようなものを想像していたのですが、すっきりとしたタイプですね。
(旦那様)ここは、大きな一面鏡よりも三面鏡のイメージだったので、こちらを選びました。
――こちらのタイルは奥様のお部屋を思わせるお色のタイルですね。
(奥様)こちらのタイルは表面にすこし凹凸があり、手作りのような温かみがあります。白い洗面台のアクセントとして使用しています。
■洗面所の天板はキッチンと揃えてコストダウンに成功
――洗面所の台はキッチンと同じ素材ですか?
(奥様)そうです。クオーツストーンという人工素材です。サイズを計算して、1ロットのユニットで使いきれるように設計してくださいました。
その分資材に無駄が出ず、コストも抑えられています。
――大手のメーカーさんは家に合わせてサイズを決めることは難しいですよね。
(旦那様)日本の大手メーカーでは、既定のサイズに限られてしまうので、DeWilsのように資材や家に合わせてカスタマイズする選択肢がありません。
建築施工まで熟知しているからこそできることだと思います。ここまで柔軟にご対応いただけて、デザイナーさんにお任せして本当に良かったです。
(奥様)こちらが「こんな風にしたい」という希望を申し上げても、一度も無理と言われたことがないのです。なんとか希望を叶えようといろいろと考えて策を講じてくださいました。
デザイナーからワンポイント
この家は、壁と床の間の幅木が高いというのも特徴的
オーソドックスを追い求めた結果、輸入家具もしっくりと馴染むレトロモダンな家に。
幼い頃暮らした、ごく普通の家を追い求めた結果、オシャレで素敵な洋館が誕生しました。
S様が実現したかったのは誰もが住むことのできる、オーソドックスな家。
そのこだわりから、キッチンだけでなく、バニティーや玄関の家具もDeWilsを採用していただきました。
どこか和を感じさせるような、お住まいにも溶け込んだ、レトロモダンを感じさせるお宅です。シンプルだけど深みのある家、これからS様ご夫妻と共に、さらに深みを増していくのではないか、そんな風に感じました。
(インタビュー・記事: A.W. 撮影: Y.T.)